地球という神秘なグラウンドで、人間の魂を健全に保つために様々な分野から呼び掛けていきます。大袈裟な題目がついていますが、要はどうでもいい事を徒然なるままに綴っています
※このページに対するご意見・ご感想はメール
 

Location 精神世界商店INDEXアニミズム>03.07.12



 

Naokoがお届けする
彷徨えるボヘミアンに人間のルーツを見る
BUFFALO SOLDIER

     人間は歴史をたどってこそ
       初めて自分のルーツを探り当てることができる
         だから俺に聞いたりしないでくれ
           俺がどこの何者であるかなどと…
                (By ボブ・マーリー)

 
「波乗りボヘミアン」
 
 梅田の地下街にできた人の波は、絶え間なく続いている。波は大きくうねり、一定の速さで規則正しく流れている。その流れと流れの合間にできた、わずかな澱みに、今日も波乗りボヘミアンはいる。一匹の太ったキジ猫を胸に抱えて。
 彼は大海原を流れに流れ、長い旅路の末、その都会に打ち上げられた。旅路の間に、衣服はくたびれ、靴は片方なくなり、髪は潮風のせいで、べたついたドレッドロックになった。彼がどこから流れ着いたのか、またいつからそこにいるのか、知る人は誰もいない。打ち上げられたゴミが、誰の関心も得ないのと同じように、彼も誰の目にもとまらない。
 始発時刻に始まり、終電時刻に終わる波を、彼はただぼんやりと、物も言わずに見上げている。時々思い出したように、太った相棒に語りかけ、乾いたパンを分け合って食べはするが、それ以外は姿勢を崩さずに、じっと座り続けている。
 彼はわずかな季節の変化を波に見る。夏はミニスカートやノースリーブや白いワイシャツの色鮮やかな波になり、冬はごわごわとした厚手のモノトーンの波になる。春は、暖かな日なたの匂いを含んだ波になり、秋は冷えた落ち葉の匂いを含んだ波になる。また満ち潮の時、波音は荒々しく不機嫌な響きになり、引き潮の時は慈悲深く穏やかな響きになる。休日、平日、晴れの日、雨の日、風の強い日、クリスマス、バレンタイン、夏祭り、大晦日、365日、波は微妙に流れが違う。彼は何年もの観測のすえに、ここの波に、ちょっとばかり詳しくなった。
 彼は一日中座り続けて、何を待っているのだろうか。自分のような漂流物だろうか。波がひいた後に残る小銭や定期券などの残留物だろうか。あるいは、いちかばちかのビッグウェーブかも知れない。ひたすら高く、ひたすら雄々しく、自分を遠くへ、知らない場所へ連れて行ってくれるビッグウェーブ。そのチャンスを逃さないように、いまか、いまかと、気を抜けないのかもしれない。だが、結局のところ、その答えを知ることはできない。
 彼の心の奥底にある海に、誰も行ったことはない。

文:ナオコ

>>>back

| 熊野に捧げる賛歌 | 文学と哲学 | アニミズム | 掃き溜めコラム |