地球という神秘なグラウンドで、人間の魂を健全に保つために様々な分野から呼び掛けていきます。大袈裟な題目がついていますが、要はどうでもいい事を徒然なるままに綴っています
※このページに対するご意見・ご感想はメール
 

Location 精神世界商店INDEXアニミズム>03.09.02



 

Naokoがお届けする
彷徨えるボヘミアンに人間のルーツを見る
BUFFALO SOLDIER

     人間は歴史をたどってこそ
       初めて自分のルーツを探り当てることができる
         だから俺に聞いたりしないでくれ
           俺がどこの何者であるかなどと…
                (By ボブ・マーリー)

 
「ヴィレッジボヘミアン」
 
 アメ村は夏休みともなれば、暇を持て余した若者たちでにぎわう。太陽が真上に来る頃には、街は一気にむせかえるような暑さに包まれ、けだるい空気を巻き起こす。
 街はどうしようもなく汚れ澱んでいる。歩道に散らばったペットボトルや潰れた紙コップ、煙草の吸い殻、ソースがこびりついたたこ焼きのトレイ。ハンバーガーショップからはケチャップの焦げた匂い、公衆トイレからはアンモニア臭、通りに面した服屋からはひび割れた音楽、横断歩道からは苛立ちとけだるさを含んだ足音。体温と熱気、騒音と汚臭、それらは空気中で入り交じり、危うい飽和状態をつくりだしている。
 その空気の一角に、守神のように彼は住み着いている。彼はこのゴミ溜めの街の王様だ。ヤニで黄色く染まった胸まである鬚と、天然ドレッドロックを風になびかせ、三角公園あたりを慣れた足取りでぶらぶら歩く。上半身はもちろん裸だ。明るい光を素肌にさんさんと浴び、時折公園の噴水でじゃぶじゃぶと水浴びをする。服を脱ぐ窮屈さ、服を着る窮屈さから解き放たれたような彼は、都会のライオンのようだ。
 彼の邸宅は色とりどりのパラソルでできている。赤や黄色、緑や青色、折り重なるように広げたパラソルの下に、大きなソファーがでんと置いてある。家具らしいものといえばそれだけだ。真夏の抜けるような青空に突き出たパラソル家は、隠れ家みたいで子供の頃の高鳴りを思い出させてくれる。
 目眩を起こしそうなほど何もかもがごちゃ混ぜになり、不調和を漂わせている街の中では、彼はかえって誰よりも目立ち、何よりも一番清らかに見える。裸が一番のお洒落着だ。流行を追う事に奔走しうわべを飾り立てている若者が、滑稽に思えて来る。彼は日に反射し黒光りした身体を丸め、街に散らばった空き缶を、ひとつひとつ丁寧に拾い上げる。中途半端に見限られたゴミとも言えないパラソルを、大事そうにゴミ捨て場から掘り起こし、パラソル家に持ち帰る。そしてソファーに腰を降ろして、のんびりと昼寝をするのだ。
 それだけで一日が過ぎる。それだけが一日だ。それ以上の一日を彼は求めない。求める必要があるだろうか。街はどうしようもなくゴミにあふれ返っている。

文:ナオコ

>>>back

| 熊野に捧げる賛歌 | 文学と哲学 | アニミズム | 掃き溜めコラム |